ダヴィンチminiシリーズやダヴィンチ Jr.シリーズの可能性を広げる新フィラメント「タフPLA」とは?



XYZプリンティングジャパンから、ダヴィンチminiシリーズおよびダヴィンチ Jrシ リーズ用の新フィラメント「タフPLA」のホワイトとブラックが発売された。新たに登場したタフPLAとはどんな特徴を持つ材料なのだろうか。そこで、3Dプリンタ ーやものづくりに関して造詣の深いフリーランスエンジニアの藤野裕之氏に、タフ PLAの特徴、追加工のテクニックなどをお訊きした。

▲フリーランスエンジニアとして多方面で活躍している藤野裕之氏

個人が道具として使うには最適なダヴィンチシリーズ

ご質問:藤野様の経歴について教えてください。


藤野:今はフリーランスでエンジニアをしているのですが、もともとは会社員とし て工業設備の開発エンジニアをしていました。脱サラをして独立して、ホビー用ロ ボットや雑誌のコンテンツの企画開発などをやった後、ホビーから離れて、もう一 度産業用を中心にしたロボットの仕事をしていました。最近は、3Dプリンターを 使った試作やデジタルモデリングの依頼とか、学校でモデリングも含めたもの造り を教える仕事などもしています。


ご質問:3Dモデリングや3Dプリンターの達人というわけですね。


藤野:そうですね。結果的にそうなっちゃっいました。3Dプリンターは、「ラピ ッドプロトタイピング」という言葉が示す様に、他の機械を使って作るよりも手早 く形が出来てくるので、今は色々な工作機械の中でも一番使っている時間が長いで すね。


ご質問:藤野様は、さまざまな3Dプリンターを使われてきましたが、最近は、XYZ プリンティングのダヴィンチシリーズを愛用しているそうですね。ダヴィンチシリ ーズのヘビーユーザーとしてのご感想をお訊きしたいのですが。


藤野:ダヴィンチシリーズは低価格なので、高級機を使っている人からはいろんな 意見も出てきますが、足りない部分は手作業で十分に補える、道具として使いこな す感覚で利用するには、気軽に使える良い3Dプリンターだと思います。もちろん 長く使っているせいもありますが、どのメーカーの製品でもやはり癖みたいなもの がありますので。私はダヴィンチ 1.0Aから使っていますが、そのメーカーさんの 癖というのが自分の使い方にちょうど合ってる感じなので、今はずっとダヴィンチ シリーズを使っています。


ご質問:出力に長時間かかる大きなものや、連続出力もされているそうですが、安 定性はいかがでしょうか?


藤野:ダヴィンチProシリーズなら、連続20時間とか30時間とかの出力でもまった く気にせずにそのまま出力完了まで待っていられるので、安心して使っています。

従来のPLAの加工のし難さを大きく改善したタフPLA

ご質問:新しく追加されたフィラメントのタフPLAについてお訊きする前に、これ まで、FDM方式の3Dプリンターでは、PLAとABSという2種類のフィラメントが使 われてきましたが、その違いについて押してください。


藤野:PLAは、もともと初期のデスクトップ3Dプリンター用フィラメントとして使 われていました。当時は必要な熱量が少なくてすむとか、精度がいいとか言われて いましたが、ちょっと扱い辛いところがありました。加工がしにくかったり、フィ ラメントの状態で長期間外に出しておくと劣化してダメになったりという。だから 、今でもPLAに対してそういうマイナスイメージを持っている方も多いと思います 。ABSは、いわゆる普通のプラスチックですね。身のまわりでもよく使われていま す。ABSを利用できる3Dプリンターを使っている人も多いと思いますが、ABSは熱 収縮の影響が大きいので、冷めるときに変形したり、剥がれたり、ヒートベッドの 温度管理なども難しいんですね。それが、これまでの3Dプリントのハードルを上 げている原因の一つだったんじゃないかと思います。


そこで最近、もう一回PLAに立ち戻って、精度のいい3Dプリンターを作ろうという 動きが出ています。素材そのものの改良も進んでいます。XYZプリンティングの PLAフィラメントは、元々サードベンダーなどのPLAフィラメントに比べても、フ ィラメントのもちの良さや後加工のしやすさという点で優れた面を持っていました 。ですから、今回開発されたタフPLAの様に、本当にABSでなければダメという理 由がなければ、どっちを選んでも大丈夫だよという方向に今はなりつつあるんじゃ ないかなと思っています。


▲ABS(左)とPLA(右)の比較。ABSは収縮が大きいため、出力サイズが大きいとこの ように反って隙間ができてしまうことがある


ご質問:熱で融かしているときの臭いも、ABSはちょっと嫌な臭いがしますが、 PLAなら気にならないですよね。


藤野:ABSは石油由来のプラスチック、PLAは植物由来のポリ乳酸というプラスチ ックですので、薬品の嫌な臭いはしないですね。溶剤などの薬物に弱い人だと、 ABSはなかなか難しいんですが、PLAはそういう人でも比較的簡単に使える素材で すね。


ご質問:では、新フィラメントのタフPLAと従来のPLAの違いは何でしょうか?


藤野:メーカーさんのご厚意で検証する機会を頂きまして。実際に出力してみて分 かったことは、タフPLAは成形品にしなやかさがあるんです。グニャグニャ曲がる というほどではありませんが、強靱なしなやかさがあります。従来のPLAは精度は いい代わりに硬くて脆くなるところがあったんですね。それがABSとの差だったの ですけれども、タフPLAはよりABSに、感覚的に言うならば普通のプラスチックに 近いものになっています。


ご質問:確かに、従来のPLAでは硬くて割れちゃうとか、硬すぎてヤスリがかけに くいというイメージがありました。


藤野:はい。タフPLAは、粘り強さや強靱性があがっていますが、硬さそのものが 上がっているわけではありません。その為、研磨が非常にしやすくなりました。今 までの一般的なPLAは、紙やすりにかけてもなかなか削れず苦労したと思います。 XYZプリンティングのの純正PLAはそれでも加工しやすいほうでしたが、タフPLA は、本当に普通のプラスチックに近い感覚で研磨ができます。出力品の加工処理が 格段に楽になっていますね。


ご質問:塗装のしやすさも変わってるんですか?


藤野:通常のPLAでは、表面をコーティング、サーフェイサーを吹いて磨いて表面 を慣らして、またプライマー吹いてとかの作業になります。手順そのものはタフ PLAでも変わらないんですが、研磨がしやすくなっている事も関係しているのか、 下地材の食いつきはよくなっている感じがしますね。


ご質問:そういう意味で、仕上げまでこだわりたいフィギュアのような用途にはタ フPLAが向いている感じですかね。


藤野:そうですね。表面処理までやりたいとか。あとは、出たものにもうちょっと 追加工したいという人には向いています。出力品に手を入れながら仕上げていきた い人には向いていると思います。


タフPLAなら模型用の工具やペーパーで表面処理や追加工 が可能

ご質問:表面の仕上げや追加工の際には、どのような工具を使われているのでしょ うか?


藤野:ほとんど模型用の工具類と変わらないです。バリ取りのペンチとかニッパー 、あとデザインナイフ。穴を開けた造型物の内部のサポート材をかき出すための細 い平刃の彫刻刀です。あとはスポンジヤスリ類ですね。ABSの場合は、荒めのヤス リをかけた跡は有機溶剤で溶かすことができますが、PLAは薬品では溶けないので 、ヤスリも何段階かに分けて細かく仕上げていき、それから下地材、プライマーを 塗って行くというやり方です。


ご質問:ペーパーは何段階くらいかけているのですか?


藤野:普通は、そんなに細かいところまではやってないですが、ピカピカに仕上げ たければ、本当に何段階もかけてやります。今は200番前後とかの荒めのスポンジ ヤスリでデコボコをまずなくして、それから番手を上げてきれいに仕上げていく感 じですね。


ご質問:タフPLAは、ヤスリかけも普通にかかる感じですか?


藤野:普通の模型工作と感覚的にはほぼ変わらないですね。従来のPLAよりもヤス リの食いつきがよく、ヤスリがけもやりやすいです。


ご質問:こちらは全ての模型用の工具ですか?


藤野:はい、模型用のですね。時間を短縮したいので、ポリッシャーも使っていま す。電動歯ブラシのヤスリ版ですね。これで一気に削り落としたりとか。あとは電 動ツールとしては、プロクソンのペンサンダーも使っています。大きな面積、平面 を一度に処理したいときには使います。丸かったり複雑な形のときにはポリッシャ ーを使うといった使い分けをしています。これで荒削りをしてバリや大きなゆがみ を全部落として、あとは番手を上げてペーパーでという感じですね。


▲藤野氏が3Dプリンターの出力物の表面仕上げや追加工に使っている工具類


▲一番左がプロクソンのペンサンダー、その右がGツールのポリッシャー


ご質問:サポート材を外すのはどうやってますか?手で外してるんですか?


藤野:ラフトから出力品を外すのは、大きな部分は手でもぎ取ってます。苦もなく 、ペリペリと取れるので。あと残った所はニッパーとデザインナイフを使ってサポ ート材を削ぎ落としていけるので、そんなに大変ではないですね。従来のPLAだと 、時々サポート材の角が尖ってて指が痛いこともあるんですけど、タフPLAだとそ れもあまり気になりませんでした。後処理については、全体的にやりやすくなった と思っていただければいいと思います。


▲タフPLAの出力例。出力品そのままで、特に表面仕上げなどは行っていない


▲タフPLAの表面仕上げの例。左は出力品そのままで、右がペーパーを軽くかけて 、表面の積層段差を消したもの


▲こちらはより丁寧に番手の大きいペーパーまでかけたもの。表面が非常に滑らか に仕上がっている


頻繁に動かすものにはタフPLAがお勧め


ご質問:従来のPLAは、カラーバリエーションが豊富ですが、タフPLAは現状、白 黒2色というラインナップになっています。こういう用途だったらタフPLAがいい し、こういう用途なら従来のPLAがいいというような、使い分けの基準は何でしょ うか?


藤野:よく使うもの、持ったり置いたりが頻繁なもの、動かすものや後加工して仕 上げるものはタフPLAを使ってみることをおすすめしたいですね。作って飾ってお くだけのもので、素材の色で楽しみたい場合には従来のPLAの方がカラフルで向い ていると思います。また、大きいものでシャープな形状のものだと、タフPLAだと 時々ですが出力中に若干変形することがあります。造形の信頼度が低いという程の 影響ではないんですけれど、従来のPLAのほうが、大きなものを作るときの精度は まだ上かな?といった感じです。


ご質問:実用性というか、実際に手で触ったり、普段使うもの。例えば何かのパー ツが欠けてしまって、それを3Dプリンターで作ったパーツで補うような使い方で はタフPLAのほうがいいし、例えば子どもに自由にデザインさせてオブジェを作っ て飾っておくだけだったら…。


藤野:従来のPLAでも全然問題ないと思います。


ご質問:そういう意味で、ダヴィンチminiとかダヴィンチJrというのは、ヒートベ ッドを搭載していないので、ABSには対応してないんですけど、タフPLAが登場し たことによって応用範囲が広がったというか。ABSでないと難しかったような用途 にも対応できるようになったという感じでしょうか。


藤野:まさにそういう感じですね。あとは屋外で使うようなものは、従来は耐久性 の問題でABSを選択していましたが、PLAは地球環境、自然に優しいので、PLAを 使えるならどんどん使っていただきたいなというのがあります。そういう点では、 タフPLAによって耐久性が高いものが作れるようになってきましたので、でぜひ使 ってみてほしいと思います。もともとPLAは生分解性があって、一定の条件で長時 間土に埋めておくと分解されますので。タフPLAはより進化したPLAといえるでし ょう。

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導入事例

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